日本の伝統武道や芸事の世界では、
非常にこの「守・破・離」を重視します。
守とは、先人が積み重ねてきた型を模倣し、習得すること。
破とは、自分なりの工夫を重ねる努力をすること。
離とは、自分独自の技術を生み出すこと。
つまり、いかに伝統を重んじる武道や芸事であるからといって、
単に伝統を守り伝えようとするだけでは、
結局のところ伝統が守れなくなってしまうということです。
■伝統に学び、根本的な精神を
後世に存続させていくには、
やはり新しい血を加える必要があります。
そうすることで伝統が再生し、
次へと伝わっていく力を持つわけです。
■ただし、やみくもに新しいことを
やればいいのではありません。
まず、古いことに学び、
習得しなければなりません。
それがしっかりとした土台となります。
古くから伝えられたことは
厳選されたことばかりなので、
これをしっかりと学べれば、
過去の人たちが遠回りしてたどり着いた所へ
大きな失敗もせず近道でたどり着ける、
ということが約束されているのです。
こんなありがたいことはありませんよね。
■かといって、それで満足してしまっては、
過去の人たちがたどり着いたところから先へは進めません。
進歩がないわけです。
そこで初めて「破」と「離」が必要になってくるのです。
「温故知新」といいます。
古いものをただ無条件で信じ、実行するのではなく、
それを突き抜けて新しいものを求めていく。
その土台として古いものをしっかりと学ぶのです。
それでこそ新境地が生まれてくるのです。
■そしてこれは我々の過ごす
日常生活においても当てはまることです。
とある人材会社の経営者が、
伸びる若手の特徴について話をしています。
「伸びる若手は、素直に先輩の経験知をしっかり学ぶ
ことができる人です。八割方の管理職は間違ったことは言いません。
相手の言いたいことの本質を理解し、
『こういうことですよね』
と丁寧にコミュニケーションしながら仕事をする人は成長します。
新入社員や若手は山でいうと一合目か二合目しか知らない。
先輩は七合目、八合目を知っています。
だから先輩や上司の言うことをしっかり聞いて
学ぶことが大切なんです。
一番ダメなのは、自分の間違った仮説をもとに
一合目や二合目をうろうろしている若手ですね。こういう人は伸びない。
まず五年間はしっかりと型を作ることです。」
■このコメントからわかるように
成長のためには、
先人の知恵を吸収することが大切なのです。
ただし、漫然と他者の言うことを聞くだけでは
十分ではありません。
ポイントは、他者を模倣しながらも
「疑問を持ち、自分で考える」
姿勢です。
他社のアドバイスの本質は何かを考え、
自分の状況に合うように工夫したり、
アレンジするとき、
他者から多くのことを吸収することができます。
優れた人の経験から生み出されたものを
自分の中に取り込み、試行錯誤する中から
自分らしい独創的な仕事が生まれます。
■みなさんは、「守破離」の順番で
日々の仕事や生活をしているでしょうか?
どこかの段階を飛ばしたりしていないでしょうか?
何においても例外はあると思いますが、
日本の伝統を支えてきた歴史あるノウハウです。
きっと今でも何かの参考になるはずです。
是非ともみなさんの日常で活かしてみてください。